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カラー&マルチスペクトルを利用した紙幣検査

作成者: JAI|9月 29, 2020



デジタル決済が利用されるようになって数十年になりますが、最近では一段と普及が進んでいます。とはいえ、現金払いには現金ならではの利点があるため、依然としてその地位を保っています。少額のものは現金のほうが安いと思われていますし、銀行口座を持っていない人や電子決済システムにアクセスできない人、アクセスが制限されている人でも利用でき、いくら使ったかを把握するのも簡単です。



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通常、紙幣は造幣局の複数の工場で製造されます。紙幣が支払いに使われ、信用されるには高品質でなければなりませんし、偽造防止のための複雑なセキュリティ機能が組み込まれている必要があります。それには、幅広い機能をサポートし、すべての製造現場で高い品質とコンプライアンスを確保できる、堅牢で高感度の品質管理システムが必要となります。そのソリューションを提供するのがマルチスペクトル・カメラを用いた自動外観検査システムです。

欧州中央銀行の最新のプレスリリースによると、2019年の下半期に見つかって押収された偽造紙幣は約558千ユーロ(EUR)でした。流通している紙幣は約240億枚ですから、割合としては非常に小さいといえます。新たにより高度な偽造防止技術が導入されたことにより、偽造紙幣の数は着実に減少しているのです。

スイスフラン(CHF)は、偽造が最も難しい紙幣であると考えられています。2019年に報告された偽造紙幣は、合計22万スイスフラン、枚数にして1000枚未満でした。一方、世界で最も偽造されている通貨のひとつが米ドル(USD)です。米ドルはセキュリティ基準が比較的低いながらも、世界中で流通しているのが主な理由です。

紙幣には、いくつかの偽造防止技術が組み込まれています。植物繊維に特殊加工して作られた紙に施す特殊な印刷技術により、紙幣には耐摩耗性と独特の手触りがあります。また、非常に高解像度の凹版印刷技術により、目の不自由な方が紙幣を触って券種を識別できるように、縁の盛り上がったインクでざらつきを持たせています。マイクロ単位で印刷された画線部の構造は、拡大鏡を使わなければ確認できないほど細密です。

紙幣を光にかざすと透かしや肖像画が現れたり、紙幣を傾けると色や模様が変化したり浮かび上がって見えたりするような特殊な光の効果が現れます。マイクロ文字印刷、紫外線や赤外線を当てると発光する特殊発光インキといったより高度な機能は、特殊な装置を使用しなければ確認できません。さらにスイスフランには、安全線の漉き入れやピンホールなどのセキュリティ機能が強化されています。これらのセキュリティ機能は、本物の紙幣と偽造紙幣を識別するために使われます。

ただし、製造現場では紙幣の品質機能とともに、セキュリティ機能についても検証しなければなりません。現在、紙幣とそのセキュリティ機能の正確性や品質を保証するには、何百という自動および手動のチェック手段を講じる必要があります。

自動外観検査で、ほとんどのセキュリティ機能を検証することが可能です。紙幣には、それぞれが1枚ずつ固有のものであることを示すための紙幣記番号という通し番号が振られています。これは、従来のRGBカメラで簡単にチェックすることができます。RGBカメラでは、そのほかにも色、サイズ、印刷品質、料額や日本銀行券といったラベルの検査も行えます。ですが、一般的なRGBカメラでは、近紫外領域(UV)や近赤外領域(NIR)でのチェックを必要とするセキュリティ機能の検査を追加することはできません。そこでマルチスペクトル・カメラの出番となります。

マルチスペクトル・カメラは、可視光領域を超えて、それぞれ分散した位置にある複数のスペクトル・バンドの情報をキャプチャします。マルチスペクトル・カメラを使えば、1つの検査工程で、形状や色、ラベルなど目に見える品質やセキュリティ機能と同時に、近赤外線帯域などでの不可視情報を捉えて検証することができます。品質検査に使用するデバイスを1つに集約することで、検査システムはより効率的で堅牢、コストパフォーマンスにも優れたものになります。このように、マルチスペクトル・カメラを用いた検査システムは、さまざまな製造現場に適しているのです。

プリズム分光式マルチスペクトル・カメラには、複数のフィルタとして機能するプリズムブロックが搭載されており、各センサに適切なスペクトルの範囲を振り分けます。マルチスペクトル帯域で動作するマルチスペクトル・カメラは、さまざまなセキュリティ機能をチェックが可能です。高解像度カメラと適切な光学部品を使用すれば、マイクロ文字印刷を検査することもできます。

欠陥検出と同様に品質評価でも、異なるスペクトル・バンドを通して見られる特性を比較する手法が活用できます。この特性を相互に関連付けることで、欠陥の位置やサイズを正確に特定するのに効果的です。単一光軸を持つカメラシステムを使用すれば、さまざまなスペクトル・バンドで高精度の位置合わせが可能になるため、検査効率が向上します。

スペクトル・バンドの数と範囲は、慎重に選択する必要があります。広範囲をカバーするために、多数のスペクトル・バンドを備えているタイプのマルチスペクトル・カメラがありますが、波長帯数が多すぎると、詳細な画像を取得する速度が大幅に制限されます。一方、プリズム分光式のマルチスペクトル・カメラは、アプリケーションのニーズを的確に満たし、フルスピードで生産できるように選択された数の高解像度のスペクトル・チャネルを提供します。これにより、処理のスループットを損なうことなく、それぞれの製造工程で品質管理が可能になります。

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