明視野顕微鏡観察画像のノイズを低減させるには


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プリズム分光式技術を用いたカラー顕微鏡画像 提供:Digital Imaging Systems Ltd.(英国)

視野顕微鏡で良好な画像が得られるかどうかは、倍率や解像度、被写界深度、画像のコントラストなどの要素を最適に用いる手法がとられているかどうかによって大きく左右されます。接眼レンズを使用する明視野顕微鏡では、強度や色の微妙な差異を区別するのは人間の眼であるため、検出可能なコントラストは人間の眼の能力に依存します。一方、現在多くの顕微鏡で接眼レンズとして機能しているカメラでも、いくつかの不要な信号やノイズによって、微妙な差異を検出するシステムの性能が妨げられ、満足する結果が得られない場合もあります。  


2種類のノイズ

明視野顕微鏡の場合、最も影響のあるノイズはランダムノイズで、「ショットノイズ」とも呼ばれています。ランダムノイズとは、イメージセンサに到着する光の変動によって生じる、画像内の明るさや色情報のランダムな変化です。この小さくてランダムな強度変動は画像の細部にまで干渉し、時間とともに変化します(フレームごとに現れかたが異なります)。ランダムノイズ対策としては、その発生を最小限に抑えることが最良の方法(以降の明視野顕微鏡のカラーバランスに関する項を参照)ですが、何枚かの連続した画像やフレームを平均化することで、ランダムノイズの影響を低減できる場合があります。もちろん、試料が動かないこと、装置やその周囲が動いたり振動したりしないことが要求されます。平均化によって得られるノイズ低減のレベルは、画像数の平方根に比例します。つまり、ノイズを半分に減らすには4枚の画像を平均する必要があり、4分の1に減らすには16枚の画像を平均化する必要があります。しかしながら、フレームを平均化するとシャープさが失われ、画像がぼやける傾向があります。場合によっては、元画像のノイズと同じくらい許容できない可能性もあります。そのため、生成されるノイズの量を最小限に抑える方法が重要になってくるのです。

そのほかの主なノイズ源は読み出しノイズです。読み出しノイズは、アナログデジタル変換や増幅といった画像が生成される処理段階に起因する電気的なノイズで、読み出し処理の際に電子回路内で発生します。画像からすべての光を除去し、センサとカメラの読み出し回路で発生する画素間の暗電流の揺らぎによって最もよく観察されるため、「ダークノイズ」とも呼ばれています。このタイプのノイズは、長時間露光の場合に特に顕著に現われます(明視野顕微鏡観察より蛍光顕微鏡観察のほうがより対策が重要となります)。ダークノイズは熱によって引き起こされる現象のため、高温下で影響が加速します。そのため、顕微鏡観察向けカメラの中には、光が制限される環境下でも最大限にクリーンな画像を得るために、高価な「冷却」技術を用いているものもあります。

読み出しノイズは、このダークノイズと「固定パターンノイズ」と呼ばれるノイズの組み合わせで説明されることがよくあります。固定パターンノイズはダークノイズと同様に、ピクセルの電子的なムラによって引き起こされ、強度にばらつきのある非ランダムパターンを画像内に生成します。また、ダークノイズのように、低照度条件下で最も目立ちます。

ゲインがノイズに与える影響

デジタル画像の信号レベル(明るさ)は、画像にゲインを適用することで上げることができます。ゲインとは、電子的な増幅という意味の用語です。ただし、デジタル信号を「アンプで増幅させる」と、画像内のノイズ(ランダムノイズまたは読み出しノイズ)も増幅されます。ほとんどの明視野顕微鏡観察用途で最も重要なのは、ランダムノイズの成分です。画像にゲインを適用すると、ランダムノイズの分散が増加して、画像内の「雑音」がますます顕著になり、画像解析アプリケーションへの干渉を引き起こします。このため、可能な限りゲインを上げすぎないようにすることが重要となります。

高度なカラー機能を備えた顕微鏡システムの構築する際は…
ぜひ「Tech Guide: 顕微鏡観察用カメラソリューション」を参考にしてください。さまざまなカメラ機能を利用して、貴社の装置用途の要件を満たす方法について詳しくご紹介しています。

視野顕微鏡観察用途向けのカラーバランス

明視野顕微鏡観察では、光源の色温度は画像のキャプチャと解析において重要な要素です。光源には特有の放射スペクトルがあるため、色温度は画像内の対象物の色に大きく影響します。色温度が異なると、色合いがわずかに違う背景が生成され、画像内の細胞やその他の対象物の色も変わります。特定の色が特別な意味を持つ解析においては、カメラの色応答と光源の色の特性とのバランスを適切にとることが重要となります。

ほとんどのカメラでは、撮影領域に白い対象物を配置して、3つのカラーチャンネル(Red、Green、Blue)のうちの2つにゲインを適用し、3つのチャンネルすべてから同じ応答を得ることで、カラーバランス(ホワイトバランスとも呼ばれます)を調整します。利便性をよくするために、光源に色温度に応じて簡単に選択できる「プリセット」を提供しているカメラもあります。ただし、どちらの場合でも、2つのカラーチャンネルにゲインを加える処理となるため、結果として画像内のノイズレベルが上がります。

JAI Apexシリーズなどの3板式センサ設計のプリズム分光式カメラでは、高いレベルでのホワイトバランスを実現するため、ゲインによるホワイトバランス調整と色温度のプリセットに加えて、第三の方法を提供しています。各センサは、ほかの2つのセンサとは独立してシャッタ速度を個別に設定できるため、光源の色温度に応じて各センサの露光時間を比例調整することで、ホワイトバランスを調整することが可能です。この手法では、基準とするチャンネル(センサ)の信号レベルに対してその他の2チャンネルの露光時間を長くする、または短くすることでホワイトバランスを調整します。いずれの場合でも、画像にゲインを適用する必要がないため、ノイズを最小限に保つことができます。

プリズム分光式技術は、高価な「冷却」技術を用いたカメラに頼らなくても、クリーンで低ノイズの画像が要求される用途に、魅力的な代替手段を提供します。

明視野顕微鏡観察用途向けの低ノイズカメラについて詳しくは、ぜひJAIにお問い合わせください