短波赤外線 (SWIR) イメージングは、産業用マシンビジョンの世界において日に日にその重要性が増している技術です。およそ 900nm から 1700nm の波長域で動作する SWIR カメラは、通常のカメラでは捉えられない物質特性や細部を可視化します。この独自の機能により、SWIR イメージングは幅広い産業分野における検査、選別、分析のための強力なツールとなっています。
製品の製造プロセスが複雑化し品質への要求もより高まっていくなか、SWIR カメラならば、従来のイメージング技術では困難または不可能だった新しい検査の実現が可能となるのです。
物体の光の透過性は、光の波長によって様々です。肉は X線を透過しますが、骨は透過しません。水は可視光では透明ですが、SWIR では透明ではありません。このように、物質は光の波長に対してそれぞれ全く異なる様子を示します。たとえば、水は今も述べたとおり可視光を透過し SWIR を吸収するのに対し、シリコンは可視光を吸収する一方で SWIR は透過します。可視光のもとでは似たように見える物質でも、SWIR では大きく違って見えることがあるのです。
したがって、人間の目には同じ色に見えるプラスチックも SWIR なら容易に区別できます。物質に吸収されている水分の程度がはっきりと可視化され、含有量が多いほど対象物は暗く写るからです。こうした特性により、SWIR カメラは RGB センサやモノクロセンサのカメラでは検出できない物質の特徴や欠陥の検出を可能としているのです。
SWIR が物体との間で可視光とは違った相互作用を示すという特性は、様々なものの識別に利用することができます。SWIRカメラは、特に一見すると外観が似ている物質どうしの識別に効果を発揮します。
2.遮蔽物越しの画像取得能力
SWIR の光は可視光よりも波長が長いため、煙、霞、塵や、製品の包装に用いられる一部の材質を透過しやすい特性があります。このことから、通常のカメラでは撮影が困難な環境に SWIR カメラは適しています。
水が SWIR の波長を多く吸収する性質を利用すれば、湿気や水濡れ箇所、汚染物質を精密に検出することができます。水の SWIR 波長吸収特性に合わせたバンドパスフィルタをカメラに追加することで、対象物に含まれる水分レベルを明確に検知、測定することが可能になります。このことは食品加工や乾燥工程での検査において特に有用です。
シリコンでは SWIR の波長を透過してしまうため、産業用 SWIR カメラの多くはInGaAs(インジウムガリウムヒ素)センサを採用しており、このセンサには以下のような特長があります。
SWIR カメラはエリアスキャン方式とラインスキャン方式のどちらも提供されており、静止物の検査からウェブ検査や自由落下選別といった高速連続プロセスまで、様々な場面での利用が可能です。
SWIR カメラの活躍現場
SWIR イメージングは、可視光では捉えられない特性を可視化することで、食品の品質管理において重要な役割を果たします。
食品検査での代表的な用例としては、以下のものがあります。
半導体製造においては、SWIR の波長帯域に部分的な透過性を示すシリコンに対する検査で、 SWIR カメラが使用されています。
用例としては、以下のものがあります。
SWIR の波長はシリコン、接着剤、一部の封止層を透過した検査ができるため、高度な電子機器の製造現場において有用です。
物質の判別もまた、SWIR イメージングが得意としている用例のひとつです。
SWIR カメラは、以下のことを可能にします。
SWIR ベースのシステムで選別精度を高めることにより、資源回収率や持続可能性の向上に貢献します。
医薬品の製造において、SWIR カメラには以下のような用例があります。
SWIR イメージングは非接触でのリアルタイム検査を実現し、厳格な規制や品質要求をも満たします。
紙やフィルム、繊維などの連続生産プロセスにおいて、SWIR ラインスキャンカメラは以下のような検査に使用されます。
SWIR イメージングは、過酷な産業環境においても、高速かつ安定した結果を提供します。
SWIR カメラを選ぶ際には、以下の点を考慮する必要があります。
産業分野での SWIR 活用に精通したカメラメーカーと緊密に連携することが、最適なパフォーマンスと長期的な信頼性の確保につながります。
センサ技術の進化に伴い、SWIR カメラはより入手しやすくなり、解像度が向上し、産業システムへの統合も容易になっています。同時に SWIR 照明技術の、特に強力で安定性も高くコスト効率にも優れた LED 光源の進歩によっても画質は向上し、信頼性のより高い検査が可能になっています。光学系とデータ処理技術の向上により、SWIR イメージングが活躍できる範囲はさらに拡大しつつあるのです。
その一方で、有機光伝導センサ、コロイド量子ドット (CQD) センサ、改良型 CMOS ベース SWIR センサといった新しいセンサ技術も発展を見せています。こうした技術の開発は、カメラ価格の低減、取り扱える波長範囲の拡大、そしてより柔軟な製造アプローチにつながり、あらゆる業界で SWIR イメージングによる検査の導入を加速させています。
食品の安全性や持続可能性から、半導体の製造、より進歩した物質検査やリサイクルまで、産業従事者が自社の取扱品を見て理解する、その目に変革をもたらすもの、それが SWIR カメラです。
SWIR カメラは、従来の画像処理では見ることができない物質特性を可視化することで、マシンビジョンに新たな次元を切り開きます。水分の検出、素材の識別、表面下の検査といった能力により、現代の多くの産業において不可欠な存在です。
今後も検査の課題はより複雑化を辿っていくなかで、SWIR イメージングは品質や効率、プロセス制御の向上を実現するための有力な手段として、産業用ビジョンシステムの未来を担う鍵とも呼ぶべき技術となるでしょう。