貴社が構築している色検査のシステムは、対物レンズと投射レンズ、または接眼レンズを組み合わせて40倍から1000倍の総合倍率が得られる従来の顕微鏡システムでしょうか。あるいは、高性能のテレセントリックレンズを使用して、100倍以上の倍率を実現する検査システムでしょうか。いずれにしても貴社の目的は、微細な部分まで詳細に捉えて、分析できるようにすることでしょう。
このようなシステム向けのカメラを選択する際に、考慮しなくてはならない重要事項のひとつに、カメラのパーツではないものがあります。むしろカメラにあってはいけないものですが、かなり頻繁に存在します。何だと思われますか?それは、カメラのセンサや光路などに侵入するFODと呼ばれる異物です。
それでは、FODがシステムにどのような影響を与えるのか、問題を最小限に抑えるためにどのようなカメラを選択すべきかについて見ていきましょう。
ダストの粒子は、画像上ではまるでノイズのように見えます。しかも、画像全体でランダムに発生する傾向があります。光量を上げる/ゲインを下げるなどの手法で最小限に抑えることが可能なデジタルノイズとは異なり、ダストやFODは画像全体に散らばったり、特定のエリアに集中したり、スミアやすじのような形で現われたりします。さらに重要なのは、FODは物理的な粒子であり、設定を調整するなどして除去できる電子ノイズではないということです。
しかも高倍率のシステムでは、通常のマシンビジョンシステムよりもFODが目立つ傾向があります。対象の画像に対してFODをシルエット化する一般的な照明技術でも同様です。
光学調整を行うことで、多少はFODの画質への影響を減らすことができます。例えば、絞りを大きくすると、ダストやFODは目立たなくなります。ただし、絞りを大きくすると被写界深度も浅くなるため、高倍率のアプリケーションでは焦点合わせの問題が発生し、そもそもFODの影響以上に画質が悪くなるという問題が生じます。
また、サンプルによって絞りを変更する必要があるアプリケーションでは、画像ごとにFODの見えかたが変化するため、ある画像ではFODの補正が必要だったり、別の画像では不要だったりするなど、画質に不確定な要素を作ることにもなります。
高度なカラー機能を備えた顕微鏡システムの構築する際は…
ぜひ「Tech Guide: 顕微鏡観察用カメラソリューション」を参考にしてください。さまざまなカメラ機能を利用して、貴社の装置用途の要件を満たす方法について詳しくご紹介しています。
ほとんどの標準的なマシンビジョンカメラは、幅広い用途に対応した適度に「鮮明な」画像を提供します。また、サンプル内の特定の色を検出することが必要なアプリケーションでは、少しくらい画像にダストやFODがあっても、問題なく目的の色を検出することが可能です。一方で、FODに極めて敏感なタイプのアプリケーションもあります。
特に、細胞やごく小さい粒子のカウントを必要とするアプリケーションでは、光路に侵入するFODによって、深刻な影響を受ける可能性があります。例えば、赤血球と白血球をカウントするアプリケーションでは、一部のFODがターゲット要素の1つとして誤ってカウントされ、誤解を与えるような結果を招く危険性があるのです。
同様に、デバイスレベルで小さなブリッジや破損を検出する半導体システムでは、画像内のFODをチップやウェハ上の欠陥として誤って分類してしまう可能性があります。
構築しているシステムによっては、一般的なマシンビジョンカメラで見つけられるレベルのダスト/FODをたやすく許容できる場合もあるでしょう。しかしながら、アプリケーションがダスト/FODの影響を受ける可能性がある上記のようなタイプの場合、ダスト/FODの抑制を最大化するためには、スクリーニングと防止策が施されているカメラを探す価値があります。その際、ダスト抑制が高いレベルで維持されることも確認する必要があります。
ダスト/FODがアプリケーションに与える影響を最小限に抑える必要がある場合、まず、カメラメーカーがどのような方法でカメラを検査しているかを調べるところから始めましょう。カメラごとにダスト/FODの検査しているか?潜在的な問題を完全に特定するために、ピクセルごとの検査が行われているか?高倍率の条件下で行われているか?一定の水準でダスト/FOD抑制を保証しているか?などです。
また、カメラが検査された時点から納品される時点まで、品質を維持するための措置が取られているかどうかもメーカーに問い合わせましょう。例えば、回路基板から光路へのFODの侵入を防ぐため、カメラの電子機器区画は光フロントエンドから密閉されているか?レンズの開口部は厳重に密閉されているか?レンズを取り付ける工程では、FODが侵入しないように設計されているか?などです。
また、貴社においても、レンズの取り付け/取り外しは、ダストが入らないようにクリーンルーム環境で行うといった、適切な予防策を講じる必要があります。使用するレンズが清潔に保たれているか確認することも重要です。
画像に斑点が見られる場合、ほとんどのケースでカメラではなく、ほかの光学部品に原因があります。顕微鏡システムの対物レンズやカメラアダプタといった光学系をはじめ、高倍率テレセントリックレンズの前面と背面は、カメラを取り付ける前だけでなく、重要な観察で使用する前にもダスト/FODが付着していないか、必ず確認する必要があります。また、顕微鏡システムの接眼レンズも清潔に保つ必要があります。接眼レンズはカメラが捉えた画像の品質には影響しませんが、観察者に安心感を与えます。
光学部品を清潔に保つための手引きとして、オンラインで入手できる記事が数多くあります。光学部品を清潔に保つことは、標準的なマシンビジョンカメラを使用している場合でも、ダスト/FOD抑制基準を高めたカメラを使用している場合でも必要です。
もちろん、適切なダスト/FOD抑制レベルを確実に知る唯一の方法が「評価すること」であるのはいうまでもありません。JAIでは、優れた画質を提供する標準的なプリズム分光式カラーカメラだけでなく、より厳しい基準でのダスト/FOD抑制を提供するために、事前に厳密なスクリーニング検査を実施している特別なモデルを用意しております。
さらに詳しい情報や評価の支援については、ぜひJAIにお問い合わせください。JAIのプロダクトエンジニアがいつでもご相談を承ります。