カラー顕微鏡システムの設計者は、目的とする用途によって、さまざまな課題に直面しています。多くのデジタル顕微鏡システムにおいて、用途に応じた目的を実現するには、色情報を取り込んで解析することが不可欠です。システムに組み込まれているカメラは、システムの「目」として、システムの「頭脳」であるソフトウェアが機能を実行するために必要な空間情報と色情報を、適切なレベルで提供できなければなりません。
顕微鏡観察をベースとした有効なカラー画像処理ソリューションを構築するには、適切なカメラ技術を選択することが重要なファクターとなります。選択における最初のステップは、ベイヤー式カメラを採用するか、3板式のプリズム分光式カメラを採用するかを決めることです。ここでの決定は、システムの画質に大きな影響を与える可能性があります。ただし、カメラ技術はコストや筐体のサイズなど、その他の要素にも関係してくるため、さまざまな項目を慎重に検討することが重要なります。
基本的なシステム要件には、ベイヤー式カラー技術で対応
色に対する要求がそれほど厳しくないシステムの場合、ベイヤー配列のカラーフィルタを搭載した標準的な単板式カメラ(検出装置)でも、十分な成果を得られる場合があります。ベイヤー式カメラは、ピクセル上に配置された、ある決まった配列のRed、Green、Blueのフィルタを利用して色情報を捉えます。しかし、これは各ピクセルでRGBのうちどれか1つしか真の値が得られないということを意味しています。任意のピクセルの完全なRGB値を算出するには、ソフトウェアが隣接するピクセルを「見て」、他の2色の値を推定する必要があります。この「補間」といわれる推定処理では、色がくすむ傾向にあるため、精度も低下します。さらに重要なのは、カメラの有効解像度が下がることで、細部の鮮明さが損なわれ、モアレパターンやカラーフリンジといった特定のカラーアーチファクトが生じやすくなることです。
貴社のアプリケーションがこれらの問題に対してある程度許容できる場合、プリズム分光式カメラに移行するのに比べて、ベイヤー式カメラのほうが容易で経済的なソリューションを提供することが可能です。もちろんその場合でも、顕微鏡観察をベースとした画像処理の要求を満たすには、高品質のベイヤー式カメラを探す必要があります。そのため、色強調機能や色空間変換機能といった高度な機能だけでなく、低ノイズや高感度、適正なフレームレートを備えたベイヤー式カメラを選択することが重要となります。加えて、主要な顕微鏡ソフトウェアパッケージと機能統合できることも重要です。
幸い、近年はベイヤー式カラーカメラの性能が大幅に向上し、基本的なカラー顕微鏡システムの設計者に多くの優れた選択肢をもたらしています。特に、最先端のCMOSセンサ技術を基盤とした新世代のカメラは、幅広い用途のニーズに応える高フレームレートで低ノイズのカラー画像を実現しています。
高度なカラー機能を備えた顕微鏡システムの構築する際は…?
さまざまなカメラ機能を利用して、貴社の装置用途の要件を満たす方法を詳しく解説している「Tech Guide: 顕微鏡観察用カメラソリューション」を、ぜひ参考にしてください。
高度な用途には、多板式のプリズム分光式カメラ
アプリケーションに高い価値をもたらす最高水準の色再現性と空間分解能を備えた、より高度なカラー顕微鏡検査システムを構築するには、要求に応えられる、より高度なカメラ技術の採用を検討する必要があります。特定の色の微妙な色合いを検出する必要がある場合や、細部、エッジを明瞭かつシャープに再現する必要がある場合は、ベイヤー式カメラの濁った色や空間分解能の低さが問題になることがあります。
三板式のプリズム分光式カメラ(3CMOSまたは3CCD)では、高品位の光学プリズムにより、入射光がスペクトルの波長(Red、Green、Blue)に基づいて分離され、3枚のセンサで個別に受光されます。補間処理によってRGB値を推定するベイヤー式カメラと比べ、わずかな差異の判別が求められる場合に、優れた色再現性と良好なコントラストを伴った明るい色が得られます。また、解像度の損失がないことは、細胞計数アプリケーションや半導体検査をはじめ、多くの顕微鏡検査用途において、プリズム分光式カメラが細部を捉える精度を3倍向上させます。
さらに、3板式プリズム技術により、結果として実効感度が高くなります。その理由は、ベイヤーフィルタのマトリクスの場合、個々の画素に到達する波長の2/3が実質的にブロックされるのに対して、プリズム分光式カメラでは、サンプルが発する光のほぼ100%を捕捉されることにあります。損傷しやすいサンプルへのストレスを軽減するため、光量を抑えた環境下でも全体のS/N比を高くして、より良好な画質を得ることができます。
顕微鏡関連画像処理システムでは、正確な色や細部を精密に捉えることが重要な差別化要因である場合、市場で成功するためにはプリズム分光式カラーカメラの付加価値が不可欠なのです。
カメラの評価
多くの場合、両方の選択肢をテストすることが、正しいカメラを選ぶための唯一の方法であることがよくあります。色再現や色の差異の判別、低照度下における感度、精細さなど、貴社の装置用途が重要視する機能に注意を払うことが大事です。
評価の際は、ぜひJAIにお手伝いさせてください。JAIでは、ベイヤー式カメラとプリズム技術の両方を持ち、最先端の顕微鏡ソフトウェアパッケージとの機能統合だけでなく、高度なカラー機能を備えたシステム構築のためのさまざまな選択肢を、顕微鏡システムの設計者の皆さまに提供しています。