AOIシステム用カメラの選定に重要な4要素

PCB AOI

プリント基板産業(PCB)は今や現代社会の最重要産業の一つです。PCBは私達の身の回りのほとんどの電化製品に使われているため、PCB - ベア基板、プリント基板(PCBA)のいずれも効率的に製造する方法についての需要は、年々増加しています。

そして、基盤製造工程の効率を高める鍵となるものの一つである自動光学検査 (AOI) システムは、回路ショート、部品の欠落や配置ミス、傾き、半田の品質不良などの問題や欠陥を製造の初期段階で確認するために使用されてきました。このような些細な欠陥でも初期に検知されなければ、後で予想外の修理費や現場故障を招くことになります。

こうしたAOIシステムの構築は競争の激しいビジネスです。開発者は対象となるユーザーに特別な価値を確実に提供するため、適切なコンポーネントとアルゴリズムを選択しなければいけません。AOIシステムはビジョン主導であるので、最も重要なコンポーネントの選定の一つに、どのカメラをそのシステムに使用するかが挙げられます。

この記事では、設計者が次世代のAOIシステムを構築する際に検討するべき項目の中でも、特に重要である4つの基準を挙げていきます。

基準1 高解像度

パーツがますます小型化し、PCBAの密集度があがっていくなかで、“偽陽性”を最少にしつつ、問題箇所を正確に検出するために、AOIシステムが微小な細部をはっきりと “見る” ことができるかどうかが非常に重要となります

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Source: circuitassembly.com 

今日、基本的なAOIシステムでは最低でも5メガピクセルのカメラを搭載していると思われます。ハイエンドのシステムでは、PCBAの密集度や複雑さに上手く対応するため、解像度が12メガピクセルまでのカメラを搭載しているようです。

次世代のAOIの構築に際し、設計部門は解像度をより一層高めることを検討することが賢明であると言えます。25メガピクセル以上の解像度を持つカメラはハイレベルなディーテールを提供できるため、ルールベースのAOIシステムに必要な、基板の高密度化に対応することができます。またAIベースのシステムに対しては、トレーニング用データセットと比較し、インテリジェントな結論を導くためのより多くのデータを提供します。さらに、カラー情報を使用して特定の種類の欠陥を検出・解析するAOIシステムが増えてきているため、デべイヤー補正処理で発生する画像の詳細部分の損失を補完するためにも、より高い解像度が不可欠です。

基準2 ‐ ハイスピード

上に説明したメリットがあっても、高解像度がシステムのスループットを犠牲にするということを意味するのであれば、設計者はカメラの解像度を上げることを検討できません。基板の密集度が高くなるようにしても、基板メーカーや組み立て業者は歩留まりを維持(及び強化)しなければ、競合他社にお客様を取られるリスクがあるからです。このことが、スピードがAOIシステムの成功について鍵となる所以です。

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幸い、カメラには解像度とスピードの間の望ましいバランスを、設計者が見つけることを補助するオプションがあります。旧式の5メガピクセル程のAOIシステムでも最低60~100fps の速さが想定されていました。5メガピクセルカメラでもいくつかのモデルは、200fps以上の速さがありました(JAI製品SP-5000-CXP2SP-5000-CXP4など)。

次世代のシステムで20メガピクセル以上の解像度且つスループットを維持するのに、適切に対応するフレームレートの速さを持つカメラを探すのはかなり難しいことではありますが、不可能ということではありません。

先進のCMOSセンサと高帯域幅のインタフェース(次項を参照)を使用し、新しいマシンビジョンカメラがつくられましたが、現在の12メガピクセルのシステムのスピードの要件に対応しているだけでなく、AOIシステムに次のレベルの解像度を提供しています。

代表的な例として、JAIのSP-25000-CXP4Aなどのカメラは、今日の12メガピクセルシステムで目標値となっている60~100fpsのスピードに対応するだけでなく、150fpsまでのスピードで高解像度と高スループットも実現しています。また、スループットを維持するためにフレームレートを使い、PCBAごとの複数の画像の使用もできる先進のアルゴリズムに対応し、より強化された不良検知を提供することもできます。

基準3 ‐ 高速インタフェース

前項で触れたように、スピードと解像度が目標値に達するためには、カメラには2つのものが必要となります。高速センサと、生成されたイメージデータを処理するインタフェースです。システムの解像度に関わらず、スループットの最大化が重要な競争力の要件であれば、おそらく高キャパシティーのインタフェースのカメラが求められるでしょう。

例えば、CoaXPressの標準インタフェースの最新版(v2.0)は現在、ケーブル毎に12.5Gbpsまで対応しており、1つのインタフェースで並列レーン4列を構成できます。その結果の50Gbpsの帯域幅は26メガピクセルの8ビットの画像をカメラからプロセッサーへと150fpsまでの速度で転送するのに十分な仕様です。

全てのCoaXPressカメラがいわゆる “CXP-12” のレーンスピードに対応しているわけではありませんが、カメラがそれより少ない6.25Gbps(CXP-6)で作動していても、4レーン・インタフェースは25Gbpsで、高解像度画像で60~100fpsの設定値に容易く対応しています。

CXP12 interface with microcable

AOIシステムのなかには、顧客獲得のため、ある特化した欠陥検知を重視し、スループットの重視を必要としないものがあります。このようなシステムではCamera Link “deca” インタフェースの最大6.8Gbpsの帯域幅での作動で十分といえるでしょう。

代わりに、10GigEのインタフェースのカメラを、このようなそれほど厳しくない要件に検討することもできます。このインタフェースは9~10Gbpsのデータ帯域幅を供すると同時に、ホストのPCが10GigEのスピードに対応する標準ランボードであれば、特別なインタフェース・ボード(フレーム・グラバー)は必要なくなります。

基準4 ‐ 正しいシャッタ方式

AOIシステムで高いスループットを維持するということは画像システムの視野部を高速で移動する、基板の画像を捉えることを意味します。この条件で最適な対応ができるカメラとして検討するものには、2つのタイプがあります。

まずは、グローバルシャッタのカメラです。グローバルシャッタのカメラは、画像の全体(全てのピクセル)を同時に露光します。これは、カメラが充分な速さのフレームレートと露出設定(シャッタスピード)を備えている限り、素早く動くモノの “静止” した画像が最低限のブレや歪みで撮れるということです。これは “ローリングシャッタ” カメラと対照をなしています。ローリングシャッタカメラは設計部門にとっては魅力的な製品です。というのもグローバルシャッタカメラに比べて一般的に1ピクセル単位のコストが低いからです。しかし、時間差のある走査ライン毎の露光方式では、早く動く対象物を “歪んだ” 外観に写し、多くの欠陥検知方法では採用されません(この内容について詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

ですが、選択肢はもうひとつあります。ローリングシャッタカメラのモデルによっては、 “グローバル・リセット” と呼ばれる、各走査ラインが同時に露出を開始するモードがあります。それでも露出の終了前は、ラインレベルでの歪みが残ります(詳しい解説はこちらをお読みください)。露光時間の開始時の間にフラッシュを使用し動きを静止させ、残りの露光時間は光を遮ることで、ローリングシャッタカメラは高速AOI用途の可能性を備えています。ただ、それには、ローリングシャッタカメラが高解像度、高フレームレート、高性能インタフェースなど、先述した要件をすべて充足する必要があります。それとシステムが基板を送り出すコンベアを覆うといった、視野周辺の光の制御ができることが要求されます。これらの要件を全て満たすことができれば、ローリングシャッタカメラはシステムへの検討の対象となり得ます。

全てをまとめると

PCBとPCBA用のAOIシステムを考案するのは大規模で活気に溢れるビジネスです。適切に導入されたAOIシステムは、製造プロセスで使用する基板メーカーの成功と収益に多大な影響を与えるでしょう。

こうしたAOIシステムのサプライヤーとして成功するためには、マシンビジョンの開発者は、欠陥検出のクオリティやシステムが対応する全体のスループット、どちらも優れた結果を確実に提供するようにしなければなりません。この記事で記したカメラに関連する4つの要素を注意深く検討することで、AOIシステムの開発者はこの競争の激しい市場においてそのパフォーマンスを最大にすることができるのです。