カラーマシンビジョンシステムを選択する上での検討項目 - Part 1

カラーマシンビジョンシステムを設計する際、数多くの選択肢から貴社の装置用途に最適なものを選ばなくてはなりません。まずは、エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラのどちらかを選ぶ必要があります。次に選択したカメラに基づいて、カメラ方式を検討します。ベイヤー式、トライリニア式、プリズム分光式の3つの選択肢があります。

貴社の装置用途にどのカラーカメラが適しているかは、さまざまな要素によって決まります。用途に即したカラーマシンビジョンシステムを開発するには、それらの要素をすべて考慮しなければなりません。本ブログは、カラーマシンビジョンシステムの開発にあたり検討が必要な4つの項目について、3部構成で解説しています。このPart 1では、1つ目の項目について解説します。そのほかの検討項目について解説しているパートも必ずお読みください。

色再現性と色の判別

最初の検討項目は、貴社の装置用途が求める色の再現レベルと、それによる色の判別性能です。用途によっては、検出された色値がターゲット値からどの程度乖離しているかをマシンビジョンカメラで判別できることが不可欠になります。このような分野でマシンビジョンが高い精度を要求される場合、より高度なカメラが必要になります。

さらに、色再現性と色の判別を高い水準に引き上げようとした際に最大の障害として立ちはだかるのは、補間処理と感度が低いという2つの問題です。補間処理では、周囲の画素の平均値を計算して各画素の色値を特定するため、場合によっては色値検出の過程で微妙なばらつきが生じます。そのためマシンビジョンシステムで色の微妙な差異を判別しようとする場合、実際に色合いが違うのか、ベイヤー補間処理に伴うばらつきによるものなのか、判断しかねることがあるのです。

カラークロストーク

カラークロストークが顕著に現われている場合、マシンビジョンカメラで得られる色値の精度が影響を受けます。顕著なクロストークが生じる原因は、ベイヤーカラーフィルタまたはダイクロイックプリズムコーティングによって定義されるRed、Blue、Greenの分光感度に、著しい重複があることです。チャネル間の重複が大きいと、特定の色系統、特に黄系と茶系では偽色の発生が多く、検出される色値の精度が落ちます。

このような系統の色合いをマシンビジョンシステムで判別する場合、クロストークが大きな問題となる可能性があります。そのためカラーマシンビジョンシステムを設計する際は、解析に不可欠な色の系統と、それが属する帯域で許容できるカラークロストークのレベルを検討することが重要です。

貴社の装置用途に適したカラー画像処理向けカメラ選びに迷ったら…
ぜひ「Tech Guide: カラーイメージング」を参考にしていただき、貴社の装置用途に最適なカラー画像処理向けカメラを選択しましょう。

光量レベルと感度

用途によって、開発するマシンビジョン装置に必要な感度を見極めることも大事です。ベイヤー式、トライリニア式、プリズム分光式のカメラでは、センサに到達するまでの光透過性がそれぞれ異なるため、感度に差があるからです。

例えばベイヤーフィルタは、光学プリズムに使われるガラスよりも光透過率の低い素材で製造されているだけでなく、ベイヤーモザイクパターンで配列された各画素はR/G/Bいずれかの光、つまり全波長帯域のおよそ1/3しか受けません。画素や色によっては、フィルタが受けた光量の5割以上がセンサに到達していない場合もあります。必要な光量レベル、そして許容可能なゲインとノイズのレベルに基づいて検討すると、用途に応じた最適なカメラを選択することができるでしょう。

ホワイトバランスの調整とノイズ

ホワイトバランスの調整は、カラー情報を利用するあらゆるマシンビジョンアプリケーションで必須となります。システムで使用される照明のスペクトルに合わせてベースラインを入念に調整していない場合は、実際の色値を正確に捕捉する手段はありません。ホワイトバランスを利用することで、選択するマシンビジョンカメラのタイプに応じてさまざまな方法で調整することができます。

例えば、ベイヤー式やトライリニア式のカメラでは、R/G/B各チャネルのうち一番感度が得られるチャネルに合わせて、その他の2チャネルのゲイン(増幅)を上げてホワイトバランス調整を行うのが唯一の方法です。ただし、ゲインを上げると、チャネル信号だけでなくノイズも増加します。低照度条件下のため全体でゲインを上げる必要があるときは、さらにノイズレベルも上がってしまいます。低ノイズが要件となる場合は、光量を増やすか、または別のタイプのカメラに切り替えることで対処する必要があります。

一方プリズム分光式のカメラでは、ゲインとシャッタ速度を各センサで個別に調整することができます。したがってホワイトバランスをシャッタ速度によって調整することも選択肢に入るため、基準とするチャンネル(センサ)の信号レベルに対してその他の2チャネルの露光時間を長くする、もしくは短くすることでホワイトバランスを調整する方法も取ることができるのです。露光時間が長くなるとノイズがわずかに増える可能性もありますが、ゲインを適用した場合と比べてはるかに小さいものです。ノイズを低減できる点は、用途によってはプリズム分光式カメラを選択する大きな理由になります。

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