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グローバルシャッタ vs ローリングシャッタ 貴社の用途に最適なのはどちら?

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先だってJAIは、Go-Xシリーズに新モデルを6機種追加し、トータルで30モデルに増やしました。従来モデルと新しい6モデルの違いは何か。それは、JAIの従来のエリアスキャンカメラは「グローバルシャッタ」式CMOSセンサを採用しているのに対して、新しいモデルは「ローリングシャッタ」式CMOSセンサを採用していることです。本ブログでは、テクノロジーとアプリケーションの両方の観点から、この違いが何を意味するのかについて簡単に解説します。

ローリングシャッタカメラの利点
ローリングシャッタカメラの最大の利点は、メガピクセルあたりのコストが魅力的であるということです。事実、ビジョンシステム設計者もまずそこに惹きつけられます。詳しくは次項で解説しますが、ローリングシャッタ式センサは、グローバルシャッタ式センサに比べて、読み出し方式がシンプルです。このことにより、よりシンプルなトランジスタレベルのアーキテクチャを利用することができ、その結果、設計と製造のコストを抑えることができます。これにより、ローリングシャッタカメラは、グローバルシャッタカメラよりもメガピクセルあたりのコストを低く抑えることができるのです。

ご存知のようにビジョンシステムでは、カメラのコストがシステム全体のかなりの部分を占めるため、コンペで勝ち抜いたり、市場シェアを獲得するには、競争力のある価格設定が非常に重要となります。それならビジョンシステム設計者は、当然ローリングシャッタカメラを選択すると思われますよね。しかし、実際はそう簡単にいかない、少し複雑な事情があります。

2つの読み出し方式
ローリングシャッタカメラとグローバルシャッタカメラのどちらが貴社の用途に最適であるかを判断するには、2つのセンサの露出方式と読み出し方式の違いについて、少しだけ理解しておく必要があります。

グローバルシャッタ式センサでは、全ピクセル/ラインが同時に露光されます。露光が完了すると、各ピクセルはその電荷をピクセル上のストレージノードに転送し、読み出しを待ちます。読み出しはライン単位で行われ、相関二重サンプリングによってノイズが低減されています。ピクセルデータはピクセルウェルから移動しているため、通常グローバルシャッタカメラでは読み出し期間中に次の露光を開始して、適正なフレームレートを維持することができます。

グローバルシャッタ方式

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ローリングシャッタ式センサは、ストレージノードを持たないシンプルな設計であるため、別のアプローチが必要になります。ローリングシャッタ式センサでは、すべてのセンサラインが同時に露光されるのではなく、ラインごとに露光時間をわずかにずらしながら順に走査していきます。つまり、1ライン目の露光が開始されてから、2ライン目の露光が開始されるまでにわずかな遅延が生じるのです。同様に、2ライン目の露光開始と3ライン目の露光開始の間に遅延が生じます。このように、すべてのセンサラインが露光され、個別に読み出されるまで遅延が続きます。ライン間の遅延期間はラインの読み出しにかかる時間と同じであるため、露光が完了するとすぐにラインのデータを読み出すことができます。この方式では、ピクセルレベルのストレージノードは必要ありませんが、それぞれのラインのキャプチャに時間差があることを理解しておく必要があります。

ローリングシャッタ方式

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ローリングシャッタ式センサは1ラインを非常に高速で読み出すことができるため、個々のライン間の遅延はわずか10 µs~20 µs程度ですが、1000ラインや2000ラインのセンサになると、画像の最初のラインの露光から40 ms後に最終ラインの露光が開始されることになります。

たいした遅延ではないと思うかもしれませんが、露光期間中に画像化されている被写体やカメラ自体が高速で移動している場合、ラインごとに生じるローリングシャッタカメラの露光のずれにより、画像にはさまざまな歪みが生成されます。最も一般的なのが、移動する被写体が斜めに見える「スキュー」と、ファンやプロペラなど高速で回転する被写体が曲がったり切り離されたように見える「エイリアシング」です。

ローリングシャッタ効果の例

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移動・回転している被写体をローリングシャッタカメラで捉えた場合に、生成される可能性のある歪みを簡単なアニメーションで示しています。
出典:ウィキメディア。Cmglee作、CC BY-SA 3.0、

It's a small world-小さなピクセルの世界
ローリングシャッタ式センサのシンプルなアーキテクチャで押さえておくべき重要なことがもう一つあります。センサの場所をとる回路が少ないため、全体的に画素サイズを小さくでき、良好なダイナミックレンジとS/N比が得られる適度なサイズのピクセルウェル用のスペースを確保することもできます。しかしながら、センサの1平方ミリメートルあたりの画素数が多いほどよいというわけではありません。小さな画素サイズのカメラが大きな画素サイズのカメラと同じ画質を実現するには、小さな画素ピッチのMTF(Modulation Transfer Function)要件に対応するため、より高価な光学系が必要となる場合があります。アプリケーションが求める画質要件によっては、カメラで削減したコストが相殺されてしまう可能性があります。

用途に適したシャッタ方式
グローバルシャッタとローリングシャッタの違いについて基本的な理解ができてくると、貴社の用途に適したカメラ選びが容易になってきます。

先に述べたように、アプリケーションに最適なカメラの絶対的な要件がメガピクセルあたりのコストである場合は、ローリングシャッタカメラから検討するのがよいでしょう。ただし、最終的な決定をする前に、いくつかの点を確認しておく必要があります。

  • アプリケーションには、対象物またはカメラの連続的な動きが含まれますか?
    ベルトコンベヤ上を高速で移動する物体をキャプチャする場合でも、カメラが車両やロボットアームに取り付けられている場合でも、ローリングシャッタカメラでは動きによる問題が発生する可能性があります(次項を参照)。ただし、画像のキャプチャ中はそれぞれが一時停止する「ストップ・アンド・ゴー」型のアプリケーションの場合や、固定された対象物に対してカメラがそれぞれの「停止点」に移動してさまざまな角度からキャプチャするようなアプリケーション場合は、ローリングシャッタカメラを選択肢から外す必要はありません。
連続して移動する対象物を検査するアプリケーション
(グローバルシャッタカメラを推奨)
ストップ・アンド・ゴー型のアプリケーション
(ローリングシャッタカメラの利用が可能)
Continuous-capture Stop-go-capture
  • 画像内における物体の形状や大きさ、正確な位置は重要な要件ですか?
    動きを伴うアプリケーションであっても、多少の空間的な歪みを許容できる場合に限り、ローリングシャッタカメラを利用できる場合があります。前述のように、ローリングシャッタカメラで移動体をキャプチャすると、歪んだり、ばらばらに見えたりするなど画像に揺らぎが発生することがあります。計測やバーコードの読み取り、顔認識といったアプリケーションではまったく受け入れられませんが、存在/不在のチェックや状況認識のような特定の用途ではローリングシャッタカメラを利用できる可能性があります。
  • 高いレベルで細部を確実に捉える性能とコントラストは重要な要件ですか?
    前の項でも説明しましたが、ローリングシャッタカメラは通常、メガピクセルあたりのコストパフォーマンスを最大化するため、(シンプルな設計というだけでなく)より小さな画素サイズを採用しています。ただし、小さな画素サイズのカメラが大きな画素サイズのカメラと同じコントラストを画像内で実現するには、画素ピッチが小さいほどより高価な光学系が必要になります。一方、低コストの光学系を使用した低コントラストの画像で問題のない用途であれば、ローリングシャッタカメラの使用も問題ないでしょう。ただし、より高いコントラストが要求される用途では、同等のグローバルシャッタカメラで少し大きな画素サイズのものを選ぶほうが、カメラとレンズを組み合わせたソリューションがより容易になります。

移動体をローリングシャッタで捉えるには?
連続して移動する対象物を検査するアプリケーションでは通常、低コストのローリングシャッタは選択されませんが、Go-Xシリーズのローリングシャッタカメラには、空間的な歪みの問題を取り除くことが可能な「グローバルリセット」と呼ばれる機能が搭載されています。ただし、この機能を使うには、特殊な条件下でフラッシュ照明を使用する必要があります。この件については、今後のブログで詳しく解説する予定です。貴社の用途にローリングシャッタカメラを利用できる可能性があるか、少しでもご興味を持たれましたら、ぜひお気軽にJAIへお問い合わせください。JAIのプロダクトエンジニアがいつでもご相談を承ります。

Go-Xシリーズのローリングシャッタカメラの詳細については、こちらのページをぜひご覧ください。
https://news.jai.com/jp/jai-expands-its-go-x-series-with-new-rolling-shutter-cameras

Go-Xシリーズカメラの全ラインアップについては、こちらのページをご覧ください。データシートをはじめ、各種資料をダウンロードすることができます。
https://www.jai.com/jp/go-x-series