高速マルチスペクトル・イメージングを利用した医薬品の品質検査

Quality-Inspection-Pharmaceuticals

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マルチスペクトル・イメージング

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製剤加工は、薬物や薬品を投与に適した形状に加工するため複雑な工程をともないます。特に困難なのが、完全に自動化された高速製造プロセスへの対応が要求される医薬品の製造です。公衆衛生当局(日本の場合は厚生労働省)の厳格な法規制を順守する必要もあります。

医薬品は健康上の問題につながるため、少しの間違いも許されません。容器の破損、薬の充填量の過不足、ラベルの誤表示、不適切なパッケージや変色は、わずかな誤りでも消費者のリスクとなるため、製造工程のさまざまな段階で厳密な検査が必要となります。消費者のリスクを最小限に抑えると同時に、競争の激しい市場で成功する安全な医薬品を製造するには、効率的で汎用性があるだけでなく、感度の高い品質管理システムが要求されます。カメラ技術を用いた光学的品質管理は、医薬品の製剤という高難度の検査タスクを実行するうえで重要な役割を果たします。

医薬品は、さまざまな形状やパッケージで提供されますが、最も多いのがブリスターパックに入った錠剤で、主に空洞、シール、錠剤または薬剤自体の3つの要素で構成されます。空洞は合成素材やアルミニウムで作られており、薬剤を保持します。

空洞と薬剤は、合成素材やアルミニウム、紙、柔らかいホイルなどで密封されます。各構成要素はパッケージングされる前に厳重に監視されていますが、一次包装工程で欠陥が発生する可能性があります。誤配置や充填不良、変色、ラベルの貼付不良といったパッケージや内容物の損傷を特定し、不良品を取り除く必要があります。

ほとんどの医薬品は大量に生産されます。高度な機械学習アルゴリズムを組み込んだ光学的品質管理システムは、欠陥認識に高い感度を提供しながら、大量の検査をこなすことができます。高速の光学的品質管理システムを使用することで、サンプル全体を検査することが可能になりますので、検査工程でサンプルを破壊しなければならない手動検査や機械による検査に比べて大きなメリットがあります。また、機械による検査では、処理できるサンプルのサイズも制限されます。

長年にわたり、医薬品パッケージの検査は、欠陥を検出するために可視機能をのみを使用して、従来のRGBカメラで行われてきましたが、マルチスペクトル・カメラの登場により、可視スペクトルを超えた波長帯域を捉えて検査対象を拡張できるようになりました。マルチスペクトル・カメラを応用すれば、可視光領域以外のスペクトルも含めて、複数のスペクトル・バンドで同時に画像を捉えることができます。

可視光のRGBによるキャプチャと画像処理に加えて、マルチスペクトル・イメージングに追加されるスペクトル・バンドは、錠剤がすでにブリスターパックに充填・密封されている状態でも、化学組成に基づいて錠剤の違いを識別するのに役立ちます。さらに、錠剤中の医薬品有効成分(APC)の量や均一性を測定することもできます。

外部特性と内部特性を同時に評価できることは、従来の品質管理検査システムと比較して大きなメリットがあります。パッケージの状態やラベル表示、投与量の説明書き、色分けなどの目に見える外部特性は、可視スペクトルを利用して検査することが可能です。一方で、錠剤の亀裂や破損、液剤の充填量、異物の混入、錠剤の過不足など、外観からはわからない内部特性は、特定のスペクトル・バンド(通常は近赤外領域(NIR))を利用して捉えることができます。

マルチスペクトル・イメージングは、欠陥の誤識別に関連する用途でも利用することができます。例えば、注射液のような非経口薬の場合、液中に粒子がないことを確認する検査が非常に重要となりますが、マルチスペクトル・イメージングを利用すれば、気泡と粒子の識別が容易できるため、注射薬の純度を確保しながら、廃棄物を最小限に抑えることができます。

高度なマルチスペクトル・イメージングは、医薬品の化学組成の検査にも大いに役立っています。内部情報と外部情報を組み合わせて品質評価を行うことができるので、1つの品質管理システムで運用することが可能になります。複数のシステムを用いるのに比べて、より堅牢で、操作性やメンテナンス性に優れたシステムを実現できます。

患者さんの体質や病気の特徴にあわせて、一人ひとりに最適な治療を行う個別化医療は、今後、医薬品業界の重要な分野になるでしょう。個別化医療では、患者さん個人の遺伝的背景・生理状態・疾患の状態、特定の化学物質に対する反応、特定の個人に対する有効性などに基づいて薬が製造されます。AIと組み合わせたカメラ技術を用いることで、個別化医療用医薬品の品質検査においても重要な役割を果たしていくものと期待されています。

医薬品の製造ラインで高スループットを実現するには、複数のスペクトル・バンドで高速かつ同時に検査できる機能を組み込めるよう、最新の検査システムに高速マルチスペクトル・カメラを装備する必要があります。10GBASE-T10 GigE Vision)などの高性能インタフェースは、高フレームレートを実現する帯域幅を備えているだけでなく、1本のケーブルでマルチストリーム出力をサポートしています。各波帯を個別に制御できるため、各帯域を分離して解析したり、ホストプロセッサ上で画像を合成することが可能です。

もう一つの考慮すべき重要事項は、カメラ・デバイスの空間分解能です。カメラでは、さまざまなマルチスペクトル技術が使われています。画素レベルのフィルタアレイを用いたカメラもあれば、空間情報の細部は犠牲になりますが、多岐にわたるスペクトルを捉えるために複数の光路を使用するカメラもあります。

医薬品検査システムでは、錠剤表面の亀裂や異物の粒子、液剤中の気泡、パッケージに記載されている投与量の説明書きなどを確実に識別できるように、チャネルごとに高い空間分解能が要求されます。

個々のスペクトル・バンドを正確にアライメントして重なり合わせることは、欠陥の位置や大きさを正確に特定するのをアシストします。また、異なるスペクトル・バンドで捉えた欠陥の特性を同時に追跡して、関連付けするのにも役立ちます。それを実現する最も確実な方法は、フル解像度のセンサを備え、単一の光軸ですべてのスペクトル・バンドを捉えるマルチスペクトル・カメラを使うことです。

最後に、医薬品検査システムの設計者様へ、特定の用途に必要なスペクトル・バンドの幅と位置を正確に指定できるJAIの新しいカスタマイズ技術をご紹介します。必要以上のスペクトル・バンドがあると、光源の要件が厳しくなるため、マルチスペクトル・イメージングシステムの速度が大幅に低下する可能性がありますが、このカスタマイズ技術により、波長帯の数を最小限に抑えて、システム効率を最大化することが可能になります。

このカスタマイズの手法を利用すれば、バンド数やシステムの速度、検査プロセスの有効性を適切なバランスでビジョンシステムを設計できるようになるのです。

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JAIのマルチスペクトル・カスタマイズ技術
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