プリズム分光式マルチスペクトルカメラが食品検査にもたらした革命

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この数十年間、食品の品質と鮮度に対して消費者の関心や安全性への期待が着実に高まっていることは皆さんも御存じの通りです。多くの生鮮食品バイヤーが高いハードルの品質基準を設けるようになり、スーパーマーケットで販売される新鮮な果物や野菜は、厳しい選別工程をクリアしなければならなくなりました。

果物や野菜が収穫された後に、品質評価プロセスによって色などの目に見える部分だけでなく、熟成度、形の良さ、サイズの手頃さ、果皮や果肉に傷みがないかなど、さまざまな検査を実施しています。また最近では、硬さや柔らかさ、弾力性などの質感に関する特性まで評価することが一般的となっています。そして品質評価は、皮を剥いたりスライスしたり、缶詰にするのか、シロップなどの加工用にするのか、それとも生鮮果実や生鮮野菜として出荷するのかなど、適切な用途で出荷する手段を決定するうえでも大いに役立っています。

最近まで品質評価は「人の目」によって行われていました。依然として人間による生鮮食品の品質評価が、大きな役割を果たしている国や地域が存在するのも事実です。一方で食糧の需要が増すにつれ、選別工程の自動化が生産者にとって短期的・長期的のどちらの観点でも、高い生産性を維持しつつ一定水準の品質も同時に保つために「鍵の役割」を担うようになっています。サプライチェーン全体の効率を高めるという重要なポジションを占めているのです。

標準的なカラーマシンビジョンカメラを使った自動選別システムでは、果物表面の欠陥や形状、サイズなどの外観の情報から色の濃度や表面の質感を検査しています。加えて、それぞれの果物や野菜がもつ固有の特性を外観から得られる画像情報を元に内部の状態を推測し、硬さや熟成度を検査しています。しかし、可視光領域を捉える波長(400700nm)のほとんどは、果物や野菜の内部まで透過できないため、なかば「推測」によって検査をするしかないという側面があることは事実です。果物や野菜の中の状態までも正しく捉えるには、近赤外波長(7001000nm)に高い感度を持つカメラを検査システムに組み込む必要があります。可視光波長と近赤外波長を組み合わせることで、果物や野菜の外部と内部を同時に正しく評価することが可能になるのです。

こうしたシステムでは、可視光波長を用いる検査と近赤外波長を用いる検査で、それぞれの画像をキャプチャするために異なるカメラを用いなければなりません。それには「1ピクセルに満たない高い精度で良好な光学アライメントを実現できるのか」という課題が常に付随してきます。また高速選別システムには、ベルトコンベヤーや高速移動レーンなど細かな振動が発生する要因が必ず含まれていますので、精密にアラインメントしても徐々にずれが生じてしまい、一定期間で再調整しなければならないという現実的な問題もあります。例えば、果物に「傷み」の可能性のあるスポットのサイズが8ピクセルだったとします。一方で「良品」として許容される傷んだスポットのサイズが6ピクセルだった場合、複数のカメラ間の光学的な位置ずれが2ピクセルを超えてしまうと、実際に傷んでいる部分は基準値よりも大きかったにも関わらず、「良品の品質基準を満たしている」と誤って判定してしまう可能性を多分に含んでいるということです。

またこうした「良品と不良品の判別」に関わる問題だけではなく、複数のカメラを配置したシステムは、全体のスペースが大きくなるという別の問題も生まれます。振動でアラインメントがずれないようにカメラを強固に固定するためには、しっかりした頑丈なパーツが必要ですが、複数のカメラの場合には、このスペースが大きくなりすぎて小規模なシステムには収まらなくなってしまいます。複数のカメラ画像を処理するにはホストPCやシステム全体も複雑になり、安定した動作が不可欠な選別システムへの影響も考慮しなければなりません。

こうしたさまざまな問題を解決する手段として、食品検査システムの設計者が強く支持する効率的なアプローチとして、「プリズム分光式のマルチスペクトルカメラ」の採用に注目が集まっています。プリズム分光式であれば、レンズからの入射光がプリズムブロックによって正確に分離され、可視光領域に感度を持つセンサと、近赤外領域に感度を持つセンサに同時に送り込まれます。それぞれのセンサに配置されたひとつひとつのピクセルが捉えた画像は、単一の光軸からプリズム分離された画像ですので「完全な同一画像」としてキャプチャされています。正確に視野を位置合わせするために、特別な機器や設備を用意する必要もありません。

このようにプリズム分光技術を用いたカメラが1台あれば、複数の異なる波長で画像を同時キャプチャできるため、物理的なスペースを大幅に削減でき、小型の選別装置には特に有効な手段といえます。すべてのビデオストリーミングチャンネルを正確かつ同時に撮像することために、特別な同期トリガー発生装置を備える必要もありません。そしてカメラヘッド内で画像を「合成」して出力する訳ではなく、異なるセンサで捉えた画像をそれぞれ別々のストリーミングとして出力させることができます。つまり、キャプチャされた個々の近赤外画像のストリームとは別に、RAW画像またはデベイヤ処理されたRGB画像を同時に出力できるという意味です。これにより必要に応じて個々のビデオストリームをホストPCで別々に後処理することもでき、対象物の「傷み」についてこれまで以上に容易に解析することが可能になります。

RGBビデオストリームとNIRストリームを異なる設定で出力することもできますので、このマルチストリーミング技術を利用すれば、システム設計の自由度も高まります。またRGBチャンネルとNIRチャンネルの分光感度を微調整する必要がある場合も、プリズム技術を利用すれば、適切に効率よくシステムを組み上げることが可能になります。


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