2019年12月に発売されたSPARKシリーズの4500万画素エリアスキャンカメラに、新たなバリエーションが加わりました。SP-45001M-CXP4(モノクロ)、およびSP-45001C-CXP4(カラー)は、従来機種のSP-45000-CXP4と同じ8192 x 5460ピクセル(4470万画素)のグローバルシャッタ式CMOSセンサを採用しておりますが、撮像フレームレートを従来機種より低速にしたことによって、従来機種よりも定価ベースで約20%のコストダウンを達成しました。
SP-45001-CXP4は、8ビット画像の場合に最大38.67fps、10ビット/12ビット画像では最大32.23fps(ともにフル解像度時)で撮影することができ、超高解像度が求められるアプリケーションに対応する機能を備えています。8Kの解像度が必要だが、従来機種ほどの高速フレームレートは不要というような用途では魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。(従来機種SP-45000M/C-CXP4の最大フレームレートは52fps)
このカメラのコストメリットを活かすことによって、フラットパネルディスプレイ検査、半導体検査、PCB基板検査など複数の高解像度カメラが利用されるマシンビジョンシステムにおいて、ビジョンシステム設計者の皆さんはシステム全体のコスト競争力を最大限まで引き出すことが可能となります。
SP-45001-CXP4は、ダークノイズがわずか4.5エレクトロン、標準ダイナミックレンジが67dbという従来機種とまったく同じ優れた画質を提供します。独自技術のデュアルゲインを使用したハイダイナミックレンジ(HDR)モードでは、ビット深度に関係なくダイナミックレンジが73dBまで向上します。(フル解像度撮影時/16fps) HDRモードによる出力は、14ビットのリニア形式、または8/10/12ビットでのニーポイントを使った圧縮形式です。(HDRモードの詳細は後述していますので御参照ください。)
SP-45001-CXP4は、ホストPCへと効率的に接続するため4レーンのCoaXPressインタフェースを備えています。データ量が多く、重いデータ処理が必要なアプリケーションでは、SP-45000は2種類の並列処理(データ共有モード)に対応しています。1つ目は、同一フレームを異なる2つの画像処理PC間で共有できる「複製モード」です。 2つ目は、最大4つの異なるホストPCに転送する「分割データ処理モード」です。(並列処理の詳細も後述していますので御参照してください)。
また低速での撮影が許されるアプリケーションの場合には、カメラに搭載された「フレーム統合機能」を使用することで、最大8枚の連続したフレームを平均化することによりショットノイズを減少させ、画質をさらに向上させることが可能です。
イメージセンサは、対角31.5mm(スーパー35mmフォーマット)のサイズで、3.2 x 3.2μmの正方ピクセルを4470万画素備えています。大判センサを搭載していながら62 x 62 x 84.2mmの筐体に納めることができました。
従来機種SP-45000-CXP4と新機種SP-45001-CXP4のどちらも備えている主な機能には、シングルROI/マルチROI機能、水平および垂直方向の画像反転機能、エッジ強調機能、シーケンサートリガー機能、自動レベル制御機能、Birgerマウントを介して接続されたレンズをコントロールするための制御コマンド転送機能、ピクセルビニング機能(1x2、2x1および2x2)などがあります。レンズマウントはFマウントに対応しています。
ハイダイナミックレンジ(HDR)モードについて:
画像のダイナミックレンジとは、あるシーンの最も明るい部分と最も暗い部分の差、つまり同一画像内のコントラストの量(範囲)です。ハイダイナミックレンジなシーンでは、コントラスト差が非常に大きいため、明るい領域が飽和しすぎない(白飛びしない)ようにする一方で、暗い領域が真っ黒になる(黒潰れ)のを防ぐために、露光時間の調整だけで最適なポイントを見つけるのは非常に困難であり、また時には不可能なこともあります。
マシンビジョンシステムでこのようなシーンが顕著に見られるのは、電子機器の検査などで「光沢のある部品」と「暗い部品」の両方、または金属部分に特に強い光が当たる場合に見られます。また太陽光の下で「影の部分」を撮影する必要がある屋外撮影のアプリケーションでも同様に難しい場合があります。
さまざまなビジョンアプリケーションにおけるこれらの課題を克服するために、JAIの新しい 4500万画素カメラには、2つのHDR撮影モードを用意しています。1つ目のHDRモードは、デュアルゲイン方式です。2つの異なる画素から得られる光を電荷として伝送する際に、フローティングディフュージョン(FD)で変換した電荷を適用させるモードで、この場合の露光は1回のみです。カメラヘッド内でこれらの高ゲイン画像と低ゲイン画像を14ビットのリニアフォーマット画像として組み合わせることで、ダイナミックレンジを拡大します。
もう1つのHDRモードは、14ビットのHDR情報を8/10/12ビットに圧縮する方法です。それぞれのビット深度に応じたニーポイントが設定されていますので、露出時間の割合と飽和電圧レベルの割合に基づいて、ニーポイントの下部(暗部)はリニアリティを維持することで暗部の階調表現を損なうことなく、ニーポイントの上部(明部)を「曲げる」ことで極端な白飛びを抑えて必要なビット深度内に収まるようにしています。
この画像は、ニーポイントによるHDR機能によって画像の見え方がどう変わるかを示しています。左の画像はHDR機能をオフした場合です。露出に問題があることが見て取れます。(窓の横のカレンダーが暗すぎる/外の車のフロントガラスが飽和しているなど) 右の画像では、HDR機能を使用して、カレンダーの露出を適正に維持しながら、車や窓の外の家屋、および外の丘の露出状態が大幅に改善されています。
並列処理やデータの共有について:
最大18.6Gbpsにもおよぶ8Kの画像データですので、フルスピードで撮影する場合の標準の接続方法では、カメラの4つのCoaXPress出力すべてがデータ伝送に占有されます。
しかし、これは時間のかかるプロセスであり、超高解像度で大量のデータがある場合は、カメラの速度よりも、ホストPCの処理時間の方が問題になります。これに対処するためのひとつの方法が「並列データ処理」と「データ共有」です。
SP-45000は2種類のデータ共有モードをサポートしています。異なる2つのホストPC間で完全な同一フレームを共有できる「複製モード」は、8Kの超高解像度は必要だがホストPCの処理に時間がかかり過ぎるという場合に、2台に転送した画像を同時処理することでホストPCの処理時間を向上させることができます。(この場合、カメラからのデータ転送量は最大25Gbpsとなり、カメラからの伝送量はフルスピードで撮影した場合の半分となります。)
2つ目のモードは、最大4つまでのホストPCにデータを分割して伝送し、分割して処理する方法です。それぞれのホストPCへの4つのデータストリームは、複製モードのように同一画像データを伝送するのではなく、上下2分割、上下4分割、左右2分割、左右4分割など、個別に違う画像領域を伝送することができます。ホストPCもその画像領域だけを後処理すれば良いのでCPUリソースの負荷分散や時間短縮につながります。
とくに最近は、医療用の画像アプリケーションで並列画像処理への関心が急速に高まっています。高度なデータ視覚化が必要で、微分同相写像、画像ノイズ除去、画像再構成、動き推定など、複数の画像処理アルゴリズムを並行して動作させる必要があるためです。また3Dによるモデリングや写真測量などのアプリケーションの場合でも、リアルタイム性が求められるほどのイメージング速度は必要ありませんが、色、反射、および角度など、人間の知覚とほぼ同じデータを抽出して定量化したり、2次元画像から3次元データを抽出したり、非常に重いデータ処理が伴います。こうした用途ではJAIのカメラが持つデータ共有機能によって、システム全体を競と合差別化することができるでしょう。
Watch Webcast:
SPARKシリーズの新しい4500万画素カメラの持つさまざまな機能(HDRモード、並列データ処理、レンズ制御機能、シーケンサー機能)など、詳細についてお知りになりたい方は、ぜひウェブキャストもご覧になってみてください
またJAIのエンジニアはいつでも皆様からのお問い合わせをお待ちしています。