ローリングシャッタカメラで、動く対象物を画像の歪みなしにキャプチャできますか?

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グローバルリセット機能付きローリングシャッタの解説

先日のブログでは、「ローリングシャッタ」技術搭載のCMOSセンサを採用した最新のGo-Xシリーズカメラについて解説しました。そこでも書きましたが、ローリングシャッタ技術は製造が比較的簡単で、小さな画素サイズを容易に扱えるという利点があります。それにより、ローリングシャッタカメラはグローバルシャッタカメラに比べてコストを抑えることができるため、価格に対して非常にシビアなビジョンシステムでは、魅力的な選択肢となります。

しかしながら、先日のブログでも指摘したようにコストは削減できますが、一つ大きな問題点を抱えています。ローリングシャッタカメラのキャプチャ方式は、各ラインの露光開始のタイミングが直前のラインの露光開始からわずかに遅れるため、移動体を撮影すると、フレーム内で後方に傾いているような「歪んだ」画像になってしまうのです(下記参照)。

ローリングシャッタによる画像のスキュー歪み

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「グローバルリセット」でこの問題に対処できるか?
この問題に対処するため、いくつかのローリングシャッタ式センサでは、移動を続ける対象物をキャプチャする場合に使用できる「グローバルリセット」モードを備えています。もちろん、Go-Xシリーズのローリングシャッタカメラで採用されているセンサにも搭載されています。

グローバルリセット機能を使用すると、各フレームの開始時にセンサ内の全ラインが同時に「リセット」されるため、グローバルシャッタカメラと同様に全ラインの露光を同時に開始することができます。ただし、ローリングシャッタカメラはシンプルな設計でセンサ上にストレージノードがなく、露光が終了するとすぐにラインを読み出す必要があります。それにより、ラインの準備ができたときに読み出し機能が使えるように、ラインごとに露光期間の終了をずらす必要があります。その結果、シーケンスの下部のラインは、上部のラインよりも露光時間が長くなるのです。

このようにしてグローバルリセットモードでは、すべてのラインで露光開始のタイミングを合わせることができるため、全ラインが対象物の同じ位置で露光を開始でき、「スキュー歪み」の問題を取り除くことができます。しかしながら、注意が必要な点もあります。グローバルリセットモードではラインごとに露光時間が長くなるため、画像の下部が上部よりも明るくなり、モーションブラー(被写体ブレ)によって鮮明さが低下する可能性があります(下記参照)。

グローバルリセット機能搭載のローリングシャッタ
露光時間が短い上部は暗くなり、露光時間が長い下部はモーションブラーが大きくなります。

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解決策:グローバルリセットとストロボ照明を組み合わせて使う
ローリングシャッタカメラで移動を続ける対象物を撮像した際に、スキュー歪み、露光時間の違いによるグラデーション(輝度差ムラ)や鮮明さの低下といった問題を取り除く唯一の方法は、グローバルリセットモードとストロボ照明を組み合わせて使うことです。そして、周囲の照明が厳密に制御されていることも、最良の結果を得るために必要になります。

ストロボ照明を使ったグローバルリセットモードの仕組みを解説しましょう。ローリングシャッタカメラをグローバルリセットモードに設定し、高速移動する対象物をトリガ入力でキャプチャします。すべての環境光を、覆いのようなもので遮られていると理想的です。すべてのラインが同時に露光を開始した後、時間設定されたストロボが発光し、画像に適切な露光を提供します。カメラの露光時間は、最初のラインがストロボ発光時間以上の期間「アクティブ」になるように設定する必要があります。残りのすべてのラインでアクティブ期間が長くなりますが、覆いによって環境光が遮蔽されていますので、すべてのラインの露光でフラッシュ発光時間は同じになります。

ストロボ発光を使ったグローバルリセット

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トレードオフの比較
ストロボ照明を用いたグローバルリセットの手法により、ビジョンシステムの設計者は、ローリングシャッタ技術の最大の欠点である移動体の空間的な歪みを回避しながら、より低価格なローリングシャッタカメラを利用できます。とはいえ、覆いとストロボ照明を使用する必要があり、そのコストと複雑さによっては、ビジョンシステムでグローバルシャッタカメラを使用した場合と比較して、メリットが失われる可能性があります。

一部の用途では、露光の均一性をそれほど厳しく求めないアプリケーションもあります。その場合は、覆いは必要ないかもしれません。また、明るいストロボ照明を使用すると、環境光の影響を許容レベルまで減少させる効果が十分得られる可能性もあります。特に大幅なコスト削減が求められるマルチカメラシステムとっては、より低価格なローリングシャッタカメラは望ましい選択肢となるでしょう。

結論として、ローリングシャッタカメラは、対象物の動きによる空間的な歪みが重要視されないストップ・アンド・ゴー型のアプリケーションに対して、魅力的なコスト削減を確実に提供できます。移動を続ける対象物を検査するアプリケーションでもローリングシャッタカメラを検討する余地がありますが、それは「グローバルリセット」モードを搭載し、かつグローバルシャッカメラの使用と比較して、ストロボ照明と環境光制御にかかるコストと複雑さに合理性があると判断される場合に限られます。

Go-Xシリーズのローリングシャッタカメラの詳細については、こちらのページをぜひご覧ください。
https://news.jai.com/jp/jai-expands-its-go-x-series-with-new-rolling-shutter-cameras

Go-Xシリーズカメラの全ラインアップについて詳しくは、こちらのページをご覧ください。データシートをはじめ、各種資料のダウンロードができます。
https://www.jai.com/jp/go-x-series