JAIは、光路に侵入するダストや糸くずなどの異物(FOD)を最大限に制御することが強く求められる顕微鏡関連画像処理システム向けに設計された、3CMOSプリズム分光式カラーカメラの新モデル4機種を発表しました。
新たにApexシリーズに加わったAP-3200T-USB-LSXは、320万画素、ソニー製IMX265 CMOSセンサを3枚搭載し、フル解像度を38.3 fpsで出力。AP-1600T-USB-LSXは、160万画素、ソニー製IMX273 CMOSセンサを3枚搭載し、フル解像度を79 fpsで出力します。両モデルとも、帯域幅とプラグアンドプレイの互換性による容易さから、顕微鏡システムで幅広く利用されているUSB3 Visionインタフェースを採用しています。
Redチャンネルにおいてより高い応答性を必要とする用途向けには、標準モデルに備えるIRカットフィルターを除いた2モデル(AP-3200T-USB-NF-LSX、AP-1600T-USB-NF-LSX)をご用意。生命科学分野のアプリケーションでは、特定の色素や着色を強調したり周囲の組織から血液や血管を区別するため、赤色に対して高い感度が要求されますが、このモデルを利用することで、このような用途を十分にサポートすることが可能です。また、可視光領域と近赤外光領域(NIR)の両方を同時に解析する食品検査や産業用途にも有用です。
顕微鏡観察向けカメラモデル(本カメラシリーズ)の分光感度特性と一般的なタンパク質に見られる蛍光領域を、発光波長帯域として重ね合わせた図。IRカットフィルタを備えた標準モデルの場合、蛍光領域をカバーしきれないため、今回「NF(non-filter)」バージョンのモデルをご用意。
ダスト/FODのスクリーニング検査の強化
JAIのすべての顕微鏡観察用カメラは、最高水準の画質を保証するため慎重に検査されていますが、新機種の「LSX」モデルでは、さらに厳しいダスト/FOD抑制基準を満たすために、より厳密なスクリーニング検査を実施しています。この検査は、センサの製造元が画素欠陥を検出するのと同様の手法が用いられます。加えてLSXモデルでは、従来のレンズキャップの代わりに特殊な帯電防止のダストシールが付いてます。さらに、レンズを取り付ける際に侵入するFODを最小限に抑えるアルマイト加工のレンズマウントも備えています。
ホワイトペーパー
JAIの3CMOSプリズム分光式エリアスキャンカメラの卓越した高画質については、ぜひホワイトペーパー「プリズム技術が可能にする優れたカラーイメージング」を参考にしてください。
顕微鏡ソフトウェア
すでに発表しているJAIの顕微鏡観察用カメラと同様に、正式サポートするソフトウェアは、現在最も広く利用されている二大顕微鏡ソフトウェアソリューションであるMedia Cybernetics社製Image-Pro®とオープンソースソフトウェアパッケージµManagerです。
Image-Proは、世界で最も広く使用されている顕微鏡ソフトウェアパッケージのひとつで、顕微鏡ベースの画像をより簡単にキャプチャし、処理、測定、解析、共有することができます。専用設計のドライバを利用することで、ApexシリーズのカメラからImage-Proソフトウェアに画像をシームレスに受け渡し、またImage-ProからApexカメラが備える特定の機能を制御することも可能です。
オープンソースの非商用ソフトウェアソリューションを希望するお客様には、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のVale Labが独自に開発し、現在Open Imaging社で開発が継続されているµManager(Micro-Manager)とApexシリーズのカメラを統合したソリューションをご用意。JAIのカメラとµManagerが十分に連携できるデバイスアダプターをご提供します。ソフトウェアのライセンス料は無料で、micro-manager.orgウェブサイトよりダウンロード可能です。
ソフトウェアのドライバおよびデバイスアダプタの入手方法についてご不明な点がございましたら、こちらからJAIのカメラコンサルタントまでお気軽にお問合せください。
アプリケーション
標準のCマウントレンズを使用することで、ほとんどのデジタル顕微鏡にApexシリーズのLSXカメラを容易に組み込むことができます。また、3CMOSプリズムテクノロジーは、微妙な色の違いが重要である明視野顕微鏡や蛍光顕微鏡観察用途に、従来のベイヤーカラーカメラに比べてはるかに優れた色再現性を提供します。プリズム設計では、カラービニングを利用して感度を引き上げることもできます。これは、一般的なベイヤー式カメラではサポートしていない機能です。そのほかベイヤー式カメラにはないユニークな機能として、画像のノイズを最小限に保つため、ゲインではなくシャッタ速度を利用したホワイトバランス調整を備えています。
本カメラは、極めて高い色再現性と空間分解能が要求される生命科学分野のアプリケーションに幅広く対応できるように設計されています。また、色を利用して欠陥を検出するウェハ検査や金属検査システム、食品や複合材料、化粧品をはじめとする材料化学分野、粒子分析、スプレー塗装ムラ・スポット欠陥検出、織物検査のほか、細部まで精密な検査を必要とする製造システムなど、さまざまな産業用途にも利用することが可能です。
主な用途例:
生細胞観察 - 38 fpsの高フレームレート(160万画素モデルでは78 fps)と卓越した色再現性を兼ね備えた本モデルは、生細胞の顕微鏡観察において経時撮影や細胞動力学分野の総合研究用に最適です。
病理学 - 卓越した色再現性、優れた空間分解能、色強調機能を備えたApexシリーズのカメラは、病理学分野での組織切片解析、染色解析、細胞計数、細胞分類などに用いられる顕微鏡システムに最適です。
蛍光顕微鏡観察 - 蛍光染色は、特定の細胞タンパク質やその他の有機化合物を、顕微鏡で観察できる状態にする手法として多く用いられています。R/G/B各チャンネルごとにアナログゲインと露光時間を個別に設定できる独自のカメラ機能は、カラー蛍光顕微鏡観察において極めて有用です。
材料科学 - 金属表面分析や応力解析/ひずみ解析などの材料科学、農業、皮膚科学などの分野においても理想的です。
ウェハ検査 - 近年のウェハ検査システムでは欠陥検出や仕分けに顕微鏡をベースにしたシステムが採用されており、極めて高い精度が求められます。高い色再現性と優れた空間分解能を持つ本カメラシリーズがそのクオリティを約束します。